2018年07月09日

七夕のお土産

傍らに紙片、ハガキ大の。白い紙の上に私の描いた、まだ生々しい黒のインクのペン画。
これは、先日7月7日の夕べ、本郷で開かれた宮沢賢治の音の会の、会場の風景。あがた森魚さんがギターで語り歌い、クリスタルボウルなる筒状の楽器で牧野持侑さんが奏で、百年以上前に建てられたとても美しいお堂の中で、響き渡るその世界を楽しんできました。
新聞記事で興味を持ち出掛けてみましたが、道中に付けても何かと不思議な不思議な夕べでした。

赤色エレジーで有名な、あがた森魚さんのコラボライブということでなのか、100人ほど聴きに集まった人たちは、10代20代の若い世代ではなく、60,70年代に若者だったという私の憧れの世代が殆どのようでした。年齢は判りませんが一人二人、言葉を交わした女の人たちは凄く魅力的な雰囲気の方々で、もう少し話してお友達になりたかったナ。

奏でられる音や奏でる方のお人柄や、集う心やさしき人々、そんな皆すべてを包み込む荘厳な建物は、賢治の心の星々が広がっているかの、プラネタリウムの宇宙ボウルの懐でした。私は二階の床の桟敷席のふかふか座布団に、ゆったりと半分寝転ぶようにして、そのライブを楽しみました。幾人かの人たちは、すっかり横になって、気持ちよく眠ってしまったかもしれません。

こんな内容と知らずやって来ましたが、意外なことばかりで随分と贅沢なのでした。おまけに演奏が終わると、身体に色々良い影響がある筈、お楽しみに、とのコメント、おや、音楽に触れる前から、堂内に入った時、いえ、ここに向かう道中から、なんだか調子は良かったのです。落ち着いて線画が描けなくなって、8年近く経ちますが、演奏が始まる前の待ち時間の空気の中で、もうすっかり感動をして描いたのでした。時間の前後は、セットになっているのかもしれません。そして演奏後は本当に、美しい夜空を一杯に吸い込んだように気持ちよく、有難い想いで満たされました。

ここ東京の、少しばかり西の空の下は大雨洪水の大惨事・・・。ここから見上げる空は、東京の七夕にしては珍しくも星が見えて、青いその星に願うこと、祈ることは、私の中に鬱蒼としながらも多くのことでありつつも、それはそれでそれが一つの願いで。

夜闇に浮かぶ美しいピンクのサルスベリの花に手を振ったら、近くの交通整理のおじさんが挨拶してきて、こんばんわ。本郷のあの独特の濃厚な大気に満ちた道々、高く伸びた並木、窓から見える旧いギャラリーの壁に並べられた温かな絵、親切に道を教えてくれた沢山の人たち。

アンコールに皆んなで口遊んだのは、知らされていた星巡りの歌ではなくて、あなたに会いたいナ、という歌詞の繰り返しだったのですが、その簡単な歌詞とメロディーは、帰り道にも耳に囁いてきて、あなたはあなたで、あなたにとってのあなたで、そして未知の無限のアナタで。優しくて、哀しくて、恐くて、若いカップルが昔よりどこか寂し気で、温かくて、不安で、いつもより体が楽で、楽しくて、しんみりとして、頼りなくて、心強くて、遠い日の笑顔が懐かしくて、嬉しくて。

そしてそんな七夕の夕べの一枚の小さな絵が、☆祭りの手土産になって、傍らの棚の上で神々しく光放ち、私の道しるべのように、きらきらり。
posted by はるな at 12:12| 東京 ☁| 日記 | 更新情報をチェックする